住宅ローンを借り換えると、「今まで受けていた住宅ローン控除が使えなくなるのでは」「諸費用を含めて借りたら、どの残高を申告すればよいのか」と迷うことがあります。借り換え後も一定の条件を満たせば控除は継続できますが、控除期間が最初から始まるわけではありません。
とくに注意したいのは、新しいローンの契約期間と、控除の計算に使う年末残高です。この記事では、通常返済を続けながら借り換えを比較している方に向けて、条件の確認、残高の計算、年末調整の準備、費用比較の順に整理します。金利だけで決めず、税金を含めた家計の負担を確認しましょう。
- 元のローンを返すための借入れであることと、償還期間などの要件を確認します。
- 借り換えても、もともとの控除期間は延長されません。
- 新しい借入額が借り換え直前の残高を上回ると、対象残高の調整が必要になる場合があります。
借り換え後も住宅ローン控除を使うための条件
国税庁の案内では、新しい借入れが当初の住宅ローンの返済に充てられたことが明らかであり、さらに新しいローンが10年以上の償還期間であることなど、控除の対象となる条件を満たす必要があります。参考:国税庁「住宅ローン等の借換えをしたとき」。
「借り換え専用商品だから税金の条件も自動的に満たす」と考えず、契約書と返済予定表で確認してください。金融機関の融資審査と税務上の控除要件は同じものではありません。転居、所有割合の変更、増改築資金の追加なども伴う場合は、単純な借り換えとは分けて相談する必要があります。
実務上は、現在の契約、完済に関する資料、新しい借入契約、資金の支払明細を一組で保存すると確認しやすくなります。誰の借入れを、どの借入金で返済したのかが追えるようにしておくためです。夫婦それぞれが借りている場合は、家計として合算するだけでなく、本人ごとに資料を整理しましょう。
控除の残り期間と、ローンの返済期間は別
借り換えによって新たに長い返済期間を設定しても、控除を受けられる期間が延びるわけではありません。たとえば、ある方の適用期間があと4年残っている場合、新しいローンを20年返済にしても、そのことだけで控除が20年続くことにはなりません。
反対に、利息を減らしたいからと返済期間を短くする場合は、控除の継続条件への影響を先に確かめます。「今のローンを借りたときは35年だった」という事実だけでは、新しい契約の条件確認を省略できません。借り換え後の契約期間が短い案は、控除がなくなる場合も含めて費用を比べてください。
手元の控除関係書類から、居住開始年、適用期間、残りの年数を確認します。ネット記事に載った現在の制度を、そのまま過去に取得した自分の住宅に当てはめないことが大切です。取得時期や住宅の条件に応じた取り扱いを税務署などで確認しましょう。
諸費用込みで借り換えた場合の年末残高
国税庁は、借り換え直前の残高をA、新たな借入れの当初金額をB、新しいローンの年末残高をCとして、AがB以上ならC、AがB未満ならC×A÷Bを対象額とする計算を示しています。以下はこの仕組みを理解するための当サイトの仮定例です。
| 確認項目 | 仮定の金額 |
|---|---|
| A:借り換え直前の残高 | 2,000万円 |
| B:新しい借入額 | 2,100万円 |
| C:新しいローンの年末残高 | 2,058万円 |
| 控除計算の対象残高 | 2,058万円×2,000万円÷2,100万円=1,960万円 |
この例では、年末残高2,058万円をそのまま全額使うのではなく、1,960万円が対象残高となります。ただし、これに一定割合を掛けた金額が必ず全額戻るという意味ではありません。適用される借入限度額や控除率、所得・税額などの条件を別途確認する必要があります。
諸費用を現金で支払う案と借入れに含める案では、手元に残るお金だけでなく、利息と控除計算も変わります。比較の考え方は、住宅ローンの諸費用を借りる場合と現金で払う場合で整理しています。増改築資金も一つにまとめる場合などは、この単純例だけで計算せず個別に確認してください。
年末調整の前に用意する情報
給与所得者で控除適用の2年目以降など、年末調整の対象となる場合は、勤務先の案内に沿って書類を準備します。国税庁は控除を受ける最初の年分には確定申告が必要であること、2年目以降は給与所得者が年末調整で適用を受けられることを案内しています。借り換えたという理由だけで控除期間が「初年度」に戻るわけではありません。
- 今年分の住宅ローン控除の申告書など、適用年を確認できる書類
- 新しいローンの年末残高証明書、または対応する年末残高等情報
- 借り換え直前の残高と、新しい借入当初額が分かる資料
- 新しい契約の返済期間と返済開始日が分かる返済予定表
- 借り換え実行日・旧ローンの完済日が分かる記録
この一覧は確認を進めるための整理メモです。すべてを必ず勤務先へ提出するという意味ではありません。提出が必要な書類と、問い合わせに備えて手元に保管する資料を分け、担当者に確認してください。参考:国税庁「給与所得者の方へ・令和8年分」。
年末近くに借り換えたときは、旧金融機関から届いた書類だけで処理を進めないよう注意します。どの借入れが年末時点で残っているか、借り換え後の残高情報が届くかを確認し、勤務先の提出期限に間に合わない場合の対応も早めに相談しましょう。
紙の残高証明書が届かない場合は「方式」を確認する
住宅ローン控除には、従来の年末残高等証明書を使う方式に加え、金融機関が税務署へ提出した情報を活用する調書方式があります。対応金融機関や必要な申請を確認せず、紙が届かないことだけで未発行と判断しないでください。
国税庁の調書方式による住宅借入金等特別控除では、対応金融機関への適用申請やマイナポータル連携などが案内されています。また、借り換えがある場合は、残高や控除見込額があらかじめ記載される通常の場合と異なることがあります。表示された情報だけで完了とせず、借り換えの計算が必要かを確認します。
連絡するときは、金融機関へ「借り換え実行日」「今年の残高情報を受け取る方法」「必要な申請の有無」を、勤務先へ「借り換えをしたこと」「受領予定の書類」「提出方法」を伝えると整理しやすくなります。個別の税額計算や適用可否は税務署・税理士に確認してください。
控除を含めた借り換え比較は、3つに分ける
比較表では、①今後の返済額、②借り換え時の費用、③実際に利用できる控除見込額を分けます。控除だけを大きく見せたり、逆に税金を無視して金利差だけで決めたりすると、家計への影響を見誤りやすくなります。
たとえば、同じ比較期間で金利変更による支払減が30万円、借り換え費用が20万円、利用できる控除の減少が3万円と仮定すると、差引きの改善額は7万円です。これは計算の説明用で、実際の削減額や控除減少額を示しません。また、比較期間の終わりにローンが残るなら、残高の差も確認する必要があります。
返済期間を長くして月額だけを下げた案は、同じ年数で完済する案とそのまま比較できません。借り換えで返済期間を延ばす場合の総額と残高を参考に、完済までの費用と途中時点の残高を分けて確認しましょう。
比較する銀行には、希望する借入額・返済期間・団信の条件をできるだけそろえて見積りを依頼します。提示金利だけでなく、事務手数料、登記等の費用、完済手数料、保障内容まで並べてください。費用回収の考え方は借り換え費用の損益分岐点、手続きの日程は借り換えの完済日と手続きの流れで確認できます。
よくある疑問
借り換えたら控除率も最新制度になる?
借り換えだけを理由に、新しい住宅を取得した場合の制度へ切り替わると考えないでください。もともとの居住開始年や適用条件に沿って、残っている控除を確認します。今の広告や新築購入者向けの説明を、そのまま自分へ当てはめないようにしましょう。
控除を多く受けるために借入額を増やした方がよい?
借入額を増やせば控除対象も同じだけ増えるとは限りません。利息や手数料は増える可能性があるため、控除額の大小だけで決めず、現金の余裕と費用込みの負担で判断します。借入限度額や税額によっては、残高が増えても利用できる控除が増えないこともあります。
銀行の説明だけで申告を確定してよい?
銀行には契約条件・資金使途・残高証明の内容を確認できます。一方、自分の所得や住宅条件を含めた税務判断は、税務署や税理士へ相談するのが適切です。担当窓口を分け、曖昧な数字を申告書へ転記しないようにしてください。
まとめ:契約前と年末調整前の2回確認する
借り換えを比較する段階では、償還期間、控除の残り年数、諸費用を借りる場合の残高調整を確認します。実行後は、新旧ローンの資料と年末残高情報をそろえて申告準備を進めます。税金の効果を含めた費用比較と、申告に使う数字の確認を分けることが、判断と手続きをスムーズにするポイントです。
一次情報と確認日
確認日:2026年10月26日。本文掲載の国税庁No.1233、No.1230、令和8年分年末調整案内を確認しました。金額例は当サイトの仮定計算です。個別の控除適用・税額・提出書類は、契約内容と適用年に応じて確認してください。


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