住宅ローンの負担を減らしたいとき、手元のお金で繰上返済するか、金利の低いローンへ借り換えるかで迷うことがあります。どちらも利息を減らせる可能性がありますが、お金の使い方と必要な手続きは違います。
先に、生活に必要な現金を残し、そのうえで月額・総支払額・将来残高を比較しましょう。この記事では通常どおり返済中で、余裕資金の使い方を検討している方に向けて、繰上返済と借り換えを比べる順序を整理します。試算は仮定の金利・費用を使った独自計算で、現在の募集金利や個別の審査結果を示すものではありません。
- 繰上返済は元金を減らし、借り換えは契約条件を見直す方法。
- 手元資金が減る額と、費用込みの総支払額を分けて比較する。
- 今は何もしない案も含めて、家計と保障に合うか確認する。
繰上返済と借り換えは、何が違う?
繰上返済は、通常の返済とは別にローンの元金を前倒しで返す方法です。三菱UFJ銀行の案内でも、一部を返す一部繰上返済と、全額を返す期限前完済が区別されています。ここではローンを残す一部繰上返済を比較対象にします。参考:三菱UFJ銀行「繰上返済」。
借り換えは、新しいローンで現在のローンを返済し、金利や期間などを組み直す方法です。金利差だけでなく、事務手数料や登記関係費用などを含めて効果を確認します。借り換え先での審査や団信の確認も必要です。
| 比較項目 | 一部繰上返済 | 借り換え |
|---|---|---|
| 主に変えるもの | 現在の元金残高 | 金利・期間・保障等の条件 |
| 手元のお金 | 返した分が減る | 現金で払う諸費用分が減る |
| 確認する費用 | 手数料等 | 新旧ローン・登記等の費用 |
| 主な確認先 | 現在の銀行 | 現在の銀行と借り換え先 |
繰上返済には、返済期間を短くする方法と毎月の額を減らす方法があります。今回は月額を同じ土俵で比べるため、期間を変えない返済額軽減型を使います。期間短縮型なら結果が変わるので、期間短縮型と返済額軽減型の比較も確認してください。
比較する前に、使ってよい現金を決める
預金が100万円あるから100万円を返済できる、とは限りません。日々の生活費、近い将来の教育費・修繕費、収入が減ったときの備えを先に分けます。必要な予備資金は世帯の収入の安定性や支出によって異なるため、一律の金額で決めないでください。
繰上返済した現金は、そのまま預金のように引き出せるものではありません。利息削減額が大きく見えても、急な支出の際に別の高金利の借入が必要になれば、家計全体の目的と合わなくなるおそれがあります。
借り換えでも費用を現金で払うなら手元のお金が減ります。費用を借入に含める場合は元金が増えるため、現金払いの試算を流用せず計算をやり直します。諸費用を借りる場合と現金で払う場合で違いを整理しています。
残高2,000万円で、3つの案を試算
現在の残高2,000万円、年利1.5%、残り20年、元利均等返済、ボーナス返済なしと仮定します。生活の予備資金とは別に100万円の余裕資金があるものとし、次の3案を比較します。
- 現状維持:何も変更せず100万円を残す。
- 繰上返済:100万円を元金返済に使い、残り20年のまま月額を減らす。手数料はゼロと仮定。
- 借り換え:2,000万円を年1.0%・20年へ借り換え、費用60万円を現金払い。残り40万円は保有する。
| 案 | 月々の返済 | 開始時の現金支出 |
|---|---|---|
| 現状維持 | 約96,509円 | 0円 |
| 100万円繰上返済 | 約91,684円 | 100万円 |
| 借り換え | 約91,979円 | 60万円 |
繰上返済では月額が約4,825円、借り換えでは約4,530円減ります。月額だけなら繰上返済の方がわずかに低くなりますが、開始時に使う現金は40万円多くなっています。月額の差だけで結論を出さず、総額へ進みましょう。
繰上返済した100万円も、総支払額に含める
繰上返済後の毎月返済分だけを合計すると、先に支払った100万円が抜けてしまいます。比較の起点をそろえ、今日以降に払う元金・利息・費用をすべて含めて計算します。
| 案 | 今後の総支払額 | 現状維持との差 |
|---|---|---|
| 現状維持 | 約2,316.2万円 | 基準 |
| 100万円繰上返済 | 約2,300.4万円 | 約15.8万円減 |
| 借り換え | 約2,267.5万円 | 約48.7万円減 |
この条件では、借り換えの方が繰上返済より総額は約32.9万円少なくなります。ただし手元に残す40万円の運用益などは含めておらず、金利差や実際の費用が変われば結果も変わります。この一例を理由に、借り換えが常に有利だと考えないでください。
計算は年利の12分の1を月利とし、金利が完済まで一定、月末払いとして算出しています。表示は丸めており、日割り・端数調整・税効果・保証料返戻・別途保険料などは含めません。変動金利を選ぶ場合には、金利が変わる場合の試算も銀行に確認してください。
5年後に売る可能性があるなら、残高も比較する
20年間住み続けるとは限らない場合、完済までの総額だけでは判断できません。同じ条件で60回返済した後の残高は、現状維持が約1,554.7万円、繰上返済が約1,477.0万円、借り換えが約1,536.8万円です。
繰上返済案の残高が低いのは、最初に100万円を返していることも理由です。一方、借り換え案では余裕資金のうち40万円を残しています。残高の低さだけで資産状況を比べず、その時点までの支払額と残っている現金を合わせて確認してください。
売却を予定する場合には、売却費用や完済手数料も含めて比較します。費用回収の考え方は借り換え費用の回収と5年後残高を参考にできます。期間を延ばす案は、同じ期間で借り換える案とは分けて計算しましょう。
金額以外に、団信と手続きの負担も確認する
借り換えは金利だけの変更ではなく、新たな契約です。現在と同じ団信の保障が自動的に引き継がれると考えず、健康状態の告知、保障範囲、上乗せ金利、切替時期を確認します。銀行の公式解説でも、借り換え時の審査と団信が注意点として案内されています。参考:銀行公式「住宅ローン借り換えの注意点」。
希望する保障が付く場合と付かない場合では、家計にとっての意味も変わります。借り換え時の団信の確認手順を使い、月額の減少だけで保障の変更を見落とさないようにしましょう。
繰上返済にも申込方法、最低金額、実行日、手数料などの条件があります。ネットでいつでも好きな額を返せるとは限らないため、現在の銀行の案内を確認してください。住宅ローン控除を利用中なら、残高や返済期間の変更による影響も個別に確認し、ここでの税効果を含まない試算だけで判断しないでください。
両方を行うなら、先に順序を確認する
余裕資金で元金を減らし、残りを借り換える組合せも考えられます。ただし、借り換え審査中に自己判断で残高を変えると、申込額や提出書類の調整が必要になる場合があります。先に現在の銀行と借り換え先へ確認してください。
見積もりは「現在の残高のまま借り換える案」と「繰上返済を組み合わせる案」を分けます。借入額によって費用が変わる商品では費用も再計算し、最初に作った60万円という仮定をそのまま使わないようにします。
また、余裕資金を全部使う組合せが最善とは限りません。手元資金、毎月の収支、将来の支出予定、団信をまとめて比較し、家計に必要な現金を残した案から選びましょう。
よくある疑問
繰上返済なら必ず借り換えより安く済む?
手数料の少なさと利息削減額は別です。現在の金利、残り期間、返す金額、借り換えの金利差と費用で結果が変わります。
預金を残す案は損になる?
利息は減らせなくても、急な支出へ対応できる価値があります。利息の削減額だけでなく、家計が途切れないための備えを優先する場面もあります。
期間短縮型で比較してもよい?
比較できますが、完済時期と毎月の額が変わります。返済額軽減型の計算結果と混ぜず、期間短縮型の返済予定表を別に用意して総額を比較してください。
まとめ:手元資金を守り、同じ条件で試算する
繰上返済と借り換えは、どちらかを先に決めるより、余裕資金を確定してから比べる方が判断しやすくなります。開始時の現金支出を含む総額、毎月の負担、将来残高、団信の4点をそろえ、現状維持も含めて確認しましょう。
一次情報・試算確認日:2026年10月25日。掲載数値は仮定計算です。実際の金利・手数料・保障・税務上の扱いは、金融機関や適切な専門家へ確認してください。


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